日経BP社から出版されているコンピュータの「なぜシリーズ」はIT業界に身を置くものにとって必読の良書です。当編集部でコンピュータの「なぜシリーズ」全11冊 を読破したので、おすすめの読み方を解説したいと思います。なお現在執筆中ですので順次アップデートします。
情報はなぜビットなのか 第1版
- おすすめ度: ★★☆☆☆
- 著者: 矢沢 久雄
- 発売日: 2006/9/11
なぜ情報はビットなのかは書かれていない。
身近な問題をコンピュータを使ってどのように解決するかを様々な角度から説明した本。この本を読むことで日常生活とコンピュータの繋がりが見えてくる。発売日は 2006 年だが基礎的かつ普遍的な内容であるため内容に古さを感じることはない。前提知識はほとんど不要で、高校生やコンピュータに興味を持ち始めた人にもおすすめできる本。
ただし、タイトルは本の内容を反映しておらず、本書のページのほとんどを日常的な問題をどのようにモデル化して解決するかに割いている。ビットの話やコンピュータの演算のしくみについては、下記で簡単に触れられているのみである。なお、この本を読んでもなぜ情報はビットなのか(なぜ2進数で情報を取り扱うのか。なぜ10進数や16進数ではだめなのか。)はわからない。
- 8章 機械に言葉を翻訳させる
- 9章 スイッチで計算を行う
本書の後半で唐突にネットワークとDBの話を取り扱っているが、前章とのつながりもなく、また内容も浅く誰に向けに書いているかわからない。
- 10章 情報を表形式で整理する
- 11章 情報の伝達の仕組みを階層的に整理する
低評価の理由はタイトルと内容が一致していないものによるものが大きく、1章から9章までは ITに興味を持ち始めた人にお勧めできる内容である。
コンピュータはなぜ動くのか 第2版
- おすすめ度 ★★☆☆☆
- 著者: 矢沢 久雄
- 発売日: 2022/10/13
前半のCPUとメモリの説明が秀逸。ただし中盤~後半のコンテンツは微妙。
前作『プログラムはなぜ動くのか』に対する「内容が難しくてわからない」というフィードバックを受けて誕生した本。この本のページ数の約30%を占める第1章~第3章については非常に参考になる。CPUとメモリの動作をハンズオン形式で学べ、今後の学習に大いに役に立つだろう。
- 第1章 コンピュータの3大原則とは
- 第2章 コンピュータを作ってみよう
- 第3章 一度は体験してほしいアセンブラ
第4章以降は本のタイトル「コンピュータはなぜ動くのか」と内容がずれてきている。データベース、ネットワーク、データ暗号化、XML、さらにはSEの業務内容やプログラマとの関係まで書かれている。内容も浅い。この本の価値は第1章から第3章にあり、この部分をさらに深掘りしてほしかった。第1章から3章までの内容は良いが、残念ながら本全体としては評価を下げざるを得ない。
プログラムはなぜ動くのか 第3版
- おすすめ度 ★★★★★
- 著者: 矢沢 久雄
- 発売日: 2021/5/13
近年稀に見る名著。ハードウェアの知識とソフトウェアの知識がつながる。
プログラムが動いているときにCPUとメモリでは何が起きているのか。コンピュータが情報を2進数でそのように処理しているのか、コンパイルすると何が起こるのか、メモリとディスクの関係など普段コンピュータを使っていても意識しないことについてイメージを持てるようになる。タイトルに偽りのない近年稀に見る良書。基本情報技術者試験に合格した人なら、苦にならずに読めるだろう。
ネットワークはなぜつながるのか 第2版
- おすすめ度 ★★★★★
- 著者: 戸根 勤
- 発売日: 2007/4/12
マスタリングTCP/IP よりおすすめの超良書。
PCからWebサイトにアクセスして内容を表示するまでの流れを例に、ネットワークのしくみをこれ以上丁寧に書けないくらいに丁寧に説明した本。ネットワーク入門書の定番としてよく「マスタリングTCP/IP」が上がるが、ネットワークの入門者が最初に読む本としてはこちらが断然おすすめ。あくまでネットワークの入門者向けであり、IT業界の入門者向けではないので注意してほしい。IPアドレス、MACアドレス、プロトコル、TCP/IP、クライアント、サーバーなどの用語を知らないレベルだと本書に手を出すのはまだ早い。この本のコンセプト上、網羅性はないのでこの本の後に「マスタリングTCP/IP」を読みたい。
Windowsはなぜ動くのか 第1版
- おすすめ度 ★★★★☆
- 著者: 天野 司
- 発売日: 2002/10/28
エンジニア向けにWindowsのアーキテクチャを解説する貴重な本。
WindowsのOSの基礎的な仕組みについてエンジニア向けに説明している本。20年以上前に出版された本であるが、基礎的なことはあまり変わっていないため、今読んでも非常にためになる。古本が数百円で売られているので、まずは買って読んでみてほしい。同じようなレベルの本は当編集部で確認した限り存在しない。なお内容はかなり難しく読みこなすことができたら、Windowsの知識に関しては上位5%に入るだろう。
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